昔のオフミの実態!!
-後編-
それは数十分前には信じられない光景であった。
アスキャット川崎(えでぃY氏宅)の一番奥の部屋に、人間が10人も座っているのである。
その人間たちの中心はもちろん鍋である。
これからみんなでこの鍋をなごやかに食べようというのだが、その鍋の大きさから、これからの混乱が簡単に推測できてしまう。
みんなもそのことはとっくに気が付いていた。
鍋はひとつ。
しかもそれほど大きいわけでもないのだ。
ここで鍋の中に入るものを紹介しておかなければならないだろう。
その中身のほとんどは大きな発泡スチロールの中に収められている。
事前にマサキ氏が用意してくれたものであり、野菜はすでに包丁が入れられている。
かなりの量の白菜、大根、人参、えのきだけ、しいたけ、豆腐、春菊、鱈、はまぐり、えび、ソーセージ等がこれからの乱闘のわき役として鍋を彩る。
主役になる鳥肉には包丁がまだ入れられておらず、先程火で殺菌されたとみられる包丁で、さっきからけっぴ氏が台所で一生懸命切っている。
コンロに火が着き、鍋の沸騰を見守る。
そのあいだにNEOGEOの対戦ゲームが始まった。
これから、ゲームも現実も格闘になるとはオペレーターもまだ気が付いて無いようである。
そのとき、熱くなってきた鍋に野菜類が沈められた。
鳥肉はまだ用意されていない。
しかし、前半のポスト鳥肉とまで唱われたソーセージがある。
それらを投げ入れ、一気に鍋の温度が低下した。
まだまだ時間がかかりそうだ。
さきほど、ada氏ときんどー氏に買い出しに行ってきていただいたビールが皆のコップにそそがれる。
紙の皿も皆に行き渡る。
しかし肝心の箸が見あたらないのだ。
発泡スチロールの中もくまなく検索されるが出てこない。
そのとき、きんどー氏が台所からたくさんのかなりやばそうな割箸を発見した。
ほこりまみれのその箸は却下せざるを得ないほどのものであった。
まだ死ぬわけにはいかない。
そして、もう一度探し始める。
あったあった。
やっと未開封の割箸が発見された。
準備はできた。
そこで鍋まで待ちきれない気持ちが高まり、みんなからの乾杯の声がフライングぎみに発せられていった。
そしてそのとき、ついに鍋から威勢のいい水蒸気が飛び出してきた!だれからかラウンド1というかけ声とともにふたがはずされた。
主役の鳥肉が入ってないおかげで、ソーセージの比較的楽な取り合いだけという、たいした乱闘もなく箸を入れられ、優雅にテレビゲームを楽しんでいる人もまだいた。
これだ。
これこそ紳士の鍋オフである。
どうやらこのオフは成功のようである。
りにとか氏も、うなる。
そこで全員の理性を吹き飛ばす原因の一部をつくる人が現れてしまった。
師匠氏の到着である。
しかもちょうどそのとき大量の鳥肉が用意でき、さっそく静寂さを保っていた鍋に鳥肉が注ぎ込まれた。
肉を埋めるかたちで、どんどん野菜も投げ込まれていく。
ふたもされ、飲料に手をのばす。
テレビゲームもやん氏を中心にして順番にプレイされる。
そうしているうちにまた鍋が笛を吹き、心あるどなたかにふたがゆっくりとはずされ、ラウンド3がはじまった。
だれもが一斉に鳥肉めがけて箸をさしていったそのとき「鳥肉はまだ早い!」と家主の鶴の一声が部屋に響きわたった。
まだ鳥肉は煮えてなかったのである。
しかたなく野菜を食べ、次まで待つことにする。
待つ時間は意外とそう長くはなかった。
すぐに鳥肉ラウンドがはじまる笛が鳴った。
皆、箸と皿を持ち上げ待機している。
だが鍋のふたをはずそうとするものがいない。
そこで、理解のあるきんどー氏がふたをゆっくりとはずした。
「レディーゴー」。
はじまった。
格闘鍋だ。
皆一斉に鳥肉をつかみに行く。
テレビゲームのオペレーターたちはポーズもかけずに席に急ぐ。
熱湯が手にかかる。
すごい戦いである。
わたしはまさかアスキーネットの人々と肉を取り合うことになるとは夢にも思わなかった・・
そうしてずっと同じように、鳥肉が無くなるまで大乱闘は続いた。
あれだけあった鳥肉が数ラウンドを経過しただけでキレイに無くなってしまうのである。
おそろしいものだ。
すでに後からくるマサキ氏に鳥肉の配分は考慮されていない。
しかもすでにうどんの袋が引き出されており、最終ラウンドも近くなっていた。
皆の同意のもと、うどんがたくさん鍋に投げ入れられた。
これで鍋の成長期は終わったのだ。
できたばかりのうどんを皆ですする。
そして本当の最終ラウンドのために最後のうどんが投げ入れられた。
そこで悲しいかなマサキ氏が到着した。
すでにそのとき皆は家のあちこちで好きなことを始めていたのであった......
完
1994.1まじ