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それは突然巨大化したとしか考えられない。醜い体を白昼堂々と晒し海を彷徨う。そうだからこそ巨大なんだ。醜いからこそ目についてしまうように、注意をひきつけるように、それは巨大化していくんだ。誰かを好きになって、その気持ちがどんどん醜く巨大化していくのとおなじ。それも突然やってくる。アナタのココロ。ワタシのココロ。それは醜いクジラのココロ。
力無く彷徨う。行き先は波にしか分からない。大人たちは言う。フラフラしていないでしっかり生きろと。透けるほど薄いカラダ。何色にでも染まれる。大人たちは言う。自分をしっかり持てと。…違う。彷徨うように見えるのは、透けるように見えるのはあなた達がそう見ようとするから。もっと良く見て。暗い海底に沈んでしまわないように、カラダが押し潰されないように、ホラ、必死で上に行こうとしてる。光を一杯浴びたいから、誰より高くいたいから、必死で、必死で水面を目指してる。もっとよく見て。しっかり目を凝らして見て。オトナなんでしょ…。
道下の虎は見せ物。武器を無くし他人の嘲笑を得る為に滑稽に舞う。何を言われても従い何をされても怒らない。ドウゲノココロ。一度刷り込まれたら抜け出せない…。みんな道下師。なんでみんなピエロを演じるの?何でみんなは怒らないの?相手にしてないの?他人にあんなに言われて…。この国はピエロの国。みんな道下を演じてる。何を言われても怒らない。昔はあんなに猛獣だったのに。牙さえあれば…、昔を思い出しさえすれば…。あんな奴らに昔の事から何からいつまでも言われないのに。ピエロの仮面をいつまでみんな被ってるの?
天井にぶら下がり、鳥のフリをして過ごす。どんなにはばたき空をかけても鳥には成れない。何をどうしようとも、それは事実。憧れて個性を表現してもそれはただの模造品。あなたは鳥じゃないんだよ。あなたは鳥にはなれないんだよ。どれだけ似せてもあなたはあなた。誰かに似てると言ってみても、あなたは鳥にはなれない。憧れは所詮、憧れ。テレビの向こうで笑っている鳥には、なれない。だってあなたは蝙だもの。だから夜しか飛べないんだよ。
昼には見えない。太陽が無ければ輝けない。毎日毎日最高に輝けない。この星が太陽から離れないように、月はこの星から離れようとしない。どんなに思ってもあなたは太陽に勝つ事は出来ないんだよ。あなたは、月。太陽がいないときしか会えない。太陽のように辺りを明るくする事もできない。本当は気付いてるんでしょ?自分は勝てないって。どうして?あなたは自分では輝けないヒトなのに、どうして?
誰にでも優しい子。誰からも優しいと言われる子。とってもとっても可哀相。優しいって言われたら嬉しいの?優しいって良い事なの?そんなの可哀相。だって優しいって事は、他人に媚へつらう事と変わりないじゃない。とってもとっても優しい子。虫も殺せぬ優しい子。早く楽にさせてあげればいいのに、もうどうしたって死にゆく虫を殺せない、とってもとってもヤサシイ子。自分を捨てて他人に尽くすとってもとってもヤサシイ子…。
可哀相な女。目に入る女はみんなそう。どんなに偉そうにしても、どんなに強がってみても、所詮それは作られたもの。それと可哀相に見えない女。女を捨てた女。生きる価値を失ってこそ女は生きていける。どんなに文句を言ってみても所詮戯言。可哀相な女。
すべては本能。好きだから、愛してるから…。それはね。本能を正当化してるだけ。愛ってただの幻想なんだよ。そんなに夢中にならないで。そんなに待ち望まないで。そう。恋愛なんて理性をかき消して本能に忠実にしてるだけ。色々考えなくて済む低俗で下等な状態。だから…特別な言葉を作らなくていいんだよ。恋愛だろうと愛だろうと、ただ欲求を満たしたいだけ。どんなけ否定しても事実。だからのめりこめばのめりこむほど、ただの色狂い。恋を語る女はただのやりたがり。低俗な誰にでもなびく、低能なヒト。
轡葦膚菟萱詑! 〜マンダム〜
愛や恋をやたらと語る女。底の浅い救えない女。自分がそれを語れば語る程にそれは他人にとって嘲笑の対象となる。自らの範疇を露呈して意気揚揚と語れば語る程に。それは愛では無く哀。哀しい哀しい可哀相な女。自分で自らを堕落させていく。気が狂っているに違いない。愛を語る女。自分はこうだ、と信じて疑わない女。生きながらにして死人に等しい。