莫切自根金生木
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「コラム」江戸時代末期、老いて職を退いた偏屈な典医の佐々木松庵は、妻を無くし体を壊してて尚息子夫婦の世話になることを嫌い、草庵に独居する。(杓子)
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0001.携帯小説 「恋拳」  第1章 リン(杓子(★))2008/03/07(金)01:27

 アタシは、リン。
アタシは昔、親の暴力とか、色々あって言葉がしゃべれなかったんだ。
ある日、アタシの街にケンってコが流れてきた。
吹いたよw マジで。
肩パットの付いた変なレザージャケット着てるんだ。
アタシは、「レイザーラモンリスペクトかよ」って言ったんだけど、その頃ツルんでたバットは「違うよ、昔の映画『マッドマックスU・V』のパクリだよ」って言ってた。
正直よくわかんない。

大人たちは、ケンを牢屋に入れちゃった。
いつも大人はそんなだ。
正直よくわかんないけど。
アタシは、喉が渇いてるケンに水を持っていってやった。
アタシって、時々そういうトコあるんだ。
損だって分かってても、人に優しくしちゃう。バカだね。
ケンは、アタシの頭をグリグリしてくれた。
なんか、「飛行を着いた」とか言ってた。よくわかんないけど。

その後、なんか井戸のトコに大っきなモヒカンとか来て、「この井戸はこれから俺たちのモンだ、ぐえへへへ」とか言って、暴れてた。
怖かったよ。
アタシは暴力は嫌いだ。
お爺さんがぼこぼこにされてた。
アタシは止めに入って、殺されそうになったよ。
そしたら、声が出たんだ。
ケェェェェェン、て。
そしたら、ケンが来てくれたんだ。

ケンは、「あたたたた」とか、「おおわちゃぁぁぁ」とか、「お前はもう死んでいる」とか、「一歩でも動いてみろ、ボンだ」とか言ってた。
よく分からなかったけど、ミンナくちゃくちゃになって死んだヨ。
それで、アタシはケンに付いて行くって決めたんだ。

to be continued...


0002.我が霊的自叙伝 序章 霊との触れ合い(杓子(★))2008/03/09(日)01:10

 自分が他の人と違うと気付いたのは何時頃だったろう。
私は時に皆の見ないものを見、聞かぬ音を聞く少年だった。
私の家の中では、テレビの裏が霊的エネルギーの高い空間だったらしく、そこに頭を突っ込む度に、私は両親には聞こえぬ「キーン」という異音を耳にした。
青年期になっても異常現象は収まらず、友人の部屋にたむろって麻雀をする時は、必ず私の所に皆の煙草の煙が集まった。
コンビニエンスストアでは、私が店内を歩くとFM放送が乱れた。
あと、顔を見ただけで猫の年齢性別が分かった。
一目見ただけで、男の子だとか、おばあちゃんだとか分かるのだ。
 そしてまた私は、霊をよく見た。
子供の頃沢山の猫と一緒に過ごした時期が有ったせいだろうか、特に猫の霊をよく見るのだ。
人と歩いていても、誰も気付かないのに私だけが駐車車両の下の猫に気付く。
「今、居たよね、車に下に、おばあちゃんが」
などと言うと、皆は
「気持ち悪いこと言わないでくれよ」
「そんなトコに居るわけないじゃん」
と異口同音に驚いた。
しかし、霊的存在は何処にでも居るのだ。
皆が心の目を閉ざしているだけで、少し視野を広げれば誰にでも見えてくるものなのだ。
それらは、建売の家と家との隙間の塀の上に、学校の前の水のない排水溝の金網の下に、操車場のトラックの大きなタイヤの上に、畑の茄子の畝の間に、居る。
畑に居る霊は大抵排便だ。

霊は怖いものではない。
むしろ霊の方が貴方を怖れている事の方が多い。
だから時には、道端で霊を見つけたら、静かにしゃがんで「チッチッチッ」と呼んでやって欲しい。
近づいてきたら、威かさぬようにゆっくりと撫でてやって欲しい。
霊の背を撫でる柔らかな感触は、きっと貴方の魂を癒すものになるだろう。


0003.チャ人の愛 1(杓子(★))2008/03/13(木)15:06

A:何で○○って、すぐに「電話しようよ」とか言うのかなぁ
B:○○か、あいつには、そうしなきゃならない理由があるんだ。
A:なに?
B:昔、ここと違うチャットで話が合う自称27才の女子を好きになってね
 その時はすぐに声聞かせてとか言わずに、ただ色々話をして
 5ヶ月愛を語り合って、初めて会うことになったんだ
 で、電話してきてよ、って番号教えたら
 「もしもし?電話しちゃったXXです…」
 って、かかってきた声が、何となくヨソ行き仕様のお母さんの声に似てたんだ
 まさかと思いつつ、作り声でぼそぼそ応対しながら、忍び足で1階に降りると
 見たことの無い携帯で、嬉しそうに話す母親の姿が…
A:きゃー!
B:それ以来、奴は知り合った女性キャラにまず通話を求めるようになったんだョ
 お母さんでないことを確かめるために…


0004.チャ人の死 〜謎のダイイングメッセージ〜(杓子(★))2008/03/14(金)14:29

 通報があったのは4月1日の朝だった。
隣の住人が開いているドアに不審を抱いて覗き込んだ所、死体を発見したと言う。
松田と梶原は、すぐに現場に飛んだ。
「背中を一突きですか」
「うむ、争った形跡も無い。顔見知りの犯行だな」
「手がかりになりそうな物は…む!」
松田が、ガイ者の右手の先に落ちている携帯に目をとめた。
「携帯電話が開いています。誰かと通話中だったのかも知れない」
松田は手袋をした手で携帯をつまみあげた。
ボタンに触れると画面が明るくなった。
「通話じゃありませんね…これは、チャットです」
「ほう、それでも手がかりになるかもしれん。
 最後の言葉が残っていないか?」
「どうやら、独りで喋っていたようです。
 発言は残っています。…しかし…」
「何だ?」
梶原が先をうながした。
「意味不明な文字が書き込まれているんです」
「何!それはいわゆるダイイング・メッセージかも知れん。
 見せてみろ」
梶原が画面をスクロールアップすると、そこには謎の単語が書き連ねてあった。
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彦にゃん(4/1-5:36)

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彦にゃん(4/1-5:35)

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彦にゃん(4/1-5:35)

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彦にゃん(4/1-5:33)

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0005.チャ人の嘘(杓子(★))2008/03/17(月)12:40

A:なんで○○ってすぐ「それ僕も好き」とか「ああ、XXね」とかシッタカするのかなぁ?
 「俺それ苦手」とか「それ何?知らない」って言えばいいじゃん
B:○○か、あいつには、そうしなきゃならない理由があるんだ。
A:なに?
B:昔、あいつが政府の要職についていた頃…

 ある日の帰宅途中に、彼は見知らぬ男4人に拉致された。
そして、当時関わっていたある軍事施設の所在について、執拗な尋問を受けた。
彼はその事柄については本当に何も知らなかったので、知らないと答え続けていたのだが、3日目に入って連中は非道な手段に訴えた。
「目を開けな、ミスター・タフガイ」
冷たい目をした男が言った。
○○が腫れ上がった瞼をなんとか上げると、そこには妻の姿があった。
「あなた、助けて!」
猿轡を外された彼女は、○○に助けを求めた。
「美代子!」
彼は力の限りもがいたが、縛り付けるワイヤーはびくともしない。
「さあ、ヒーロー、お前にとって一番大事なのは、奥さんか、腐った母国なのか、選んでもらおうか」
「妻だ、美代子だ。知ってることは何でも言う。だが、基地の所在は本当に知らないんだ」
「ブッブー。その答えじゃだめだ。ミスター・カウボーイ」
「本当に知らないと言ってるだろう!頼む!美代子を放してくれ!」
文字通り血を吐きながら訴える○○に、男は、退屈そうにナイフを弄びながら言った。
「いいか、話すか、奥さんを失うかだ。それも、少しずつな。正直、俺はどっちでもいいんだぜ…」

 ○○が救出されたのはその2日後。
彼は衰弱していたが生還した。
だが、奥さんはもう…

B:それ以来、彼はどんな質問にも「知らない」と答えることができなく
A:絶対嘘!


0006.シリーズ・ボクシングマンガの系譜 序章(杓子(★))2008/03/26(水)22:50

 少年漫画でよく取り上げられるスポーツの一つにボクシングがある。
格闘技好きの少年にとっては、柔道や相撲よりも格好よくて絵になりやすい、マンガ向けの題材と思えるジャンルなのだが、実はボクシングのマンガ化は難しい。
野球の投手と打者のような足を止めての対決ではなく、両者が絶え間なく位置を変えながら打ち、避ける攻防なので、マンガのような静止した絵で表現するのが困難なのだ。
そこで、この稿では日本のボクシングマンガの表現を切り開いて来た先達の仕事を振り返り、いかにして我々のマンガ文化が、複雑な身体表現の技を手に入れてきたかを追って行きたい。

というか、昔からボクシングマンガが好きなのよ、ワシ。


0007.シリーズ・ボクシングマンガの系譜 1:明日のジョー(杓子(★))2008/03/26(水)23:14

 ちばてつや先生である。
日本のボクシングマンガの金字塔にして、後のヤンチャボウズやヤンチャボクサー達に「両手ぶらり戦法」を吹き込んだイケナイマンガなのである。

ジョーの八方破れな性格の印象に反して、彼のスタイルはストレートボクサー。
フォームもオーソドックスなアウトボクサーのそれだ。
パンチ表現は静止画で、フィニッシュブローの体重を乗せた、手の伸びきった姿にリアリティがあった。
ちなみに、彼のキラーパンチ「クロスカウンター」の「クロス」は、「手を交差させてお互い殴りあうカウンター」の意味に取られがちだが、相手のガードあるいはパンチの外から顔を狙う、ピッチングのフォームに似た軌道のパンチを表す通常のボクシング用語である。
実在のボクサーでは、ユーリ・アルバチャコフがフィニッシュブローとして綺麗な右クロスを使っていた。
ボクシング描写は、フライ級位のスピード感と迫力。
ちば先生の絵は、動きの表情を捉えるのが抜群に上手かったが、やや軽い。
しかし、ジョーの少し猫背に見える細い体躯は、ボクサーの美しさを簡潔に、しかし的確に表現しており、これがその後のボクシングマンガの作画の標準を定めたと言えよう。


0008.シリーズ・ボクシングマンガの系譜 2:がんばれ元気(杓子(★))2008/03/27(木)11:18

小山ゆう先生作。
これもボクシングマンガの歴史を作った名作であった。
絵柄的に画期的であったのは、何と言ってもパンチを効果線のみで描いた事である。
漫画家としては、パンチを打った瞬間の筋肉の様子や肩の入り方、肘の返り方など描きたいディテールが多かったであろうに、中軽量級ボクサーの引きの早いパンチを表現すべく、あえて肩から先をぶらす描き方を選択したのだ。
構えはオーソドックスだが小山氏の描くボクサーはちば氏に比べて上体が硬く、やや猫背で懐の深いボクサーらしい佇まいに乏しい。
そのかわり直線的なスピード感の表現は抜群で、試合のシーンは常に息の抜けない緊張感が漂う。
ボクシングをスポーツとも、梶原一騎的な「男のケンカ」とも違う「壊し合い」として描き、殴り合うシーンの痛さ、残酷さでは未だにこれを超える作品を見ない。
最終巻、元気と関との死闘の終盤、互いの脳を揺らしつつ足を止めて打ち合う2人の姿には、思わず「どっちが勝ってもいいから、もう終わってくれ」と叫びたくなるような残酷な迫力があった。
一撃を受けると顔が歪み、頭がぶれるその表現は、実際のボクシングではミドル級あたりの試合を思わせるものである。
人体の構造を上手く表現できるという意味の、いわゆる「絵の上手さ」とは別の、マンガの表現力というものを見せてくれる作品であった。


0009.一つの静かな引退の風景(杓子(★))2008/03/29(土)20:38

先日、桑田真澄投手が引退を表明した。
巨人に戦力外通告されメジャー挑戦するも、怪我に泣かされ、それでも足首の手術をして再起を図っていたのに、ついに力尽きたのだ。

阪神ファンだった僕にとって、全盛期の桑田は単に嫌いな選手だった。
うまいこと巨人に入ったし、目が陰険だし、ほくろが多いし。
が、一昨年だろうか、彼が引退か移籍かと噂されていた頃、ブログを見て一気にファンになった。
抑制の効いた丁寧な文章で、彼の思いが綴られていた。
「野球を愛している。もっと続けたい」

投手生活の後半、武道家甲野氏に師事して古武術を学び、投球術に応用するなど「大丈夫かこの人は」と思わせる一面もあったが、それも彼の野球への愛故だったのだ。
子供の頃から野球選手に憧れ、目指し、少なくとも中学以降は生活の全てをほぼそれだけに費やし、尚、一日でも長く選手でいられるようにと、彼は心を砕いていたのだ。

40代と言えば、普通の仕事なら中堅どころ、管理職にはなってもまだ現場を離れていない年頃だ。
むしろ、やっと自分の好きに仕事が出来るようになる頃と言っていいと思う。
僕は今の仕事に成り行きで就いたが、それでも面白いと思っている仕事を「そろそろ引退したら」と言われたらショックだ。
人が聞いたら笑うような大それた夢を真剣に抱いて、他人の出来ない努力をして、やっと手に入れた仕事から20年もしたら引退しなければならないなんて、スポーツ選手(ゴルフを除く)というのは、なんと過酷な人生だろう。

彼の引退の記事がニュースサイトに載った27日、同じページにはダルビッシュの、"息子に捧げる18イニング無失点"の記事が踊っていた。

>本当に世の中には、永遠なものはないよね。

引退の日の、桑田投手のブログの言葉である。


0010.小説 イドラのDNA(杓子(★))2008/03/31(月)13:32

 「このAIは迷信を信じるんだよ」
情報工学の坂田が言った。
「迷信?」
「タガルには甘いメッカミが効くとか、ロドムに襲われて偶然死ななかったマグヨーは神の子だとかね」
「変な固有名詞がいっぱい出てきたが、それは仮想世界の疫病や食物や肉食獣や人名なんだろうな。
 で、なんだって迷信を信じる機能なんてつけたんだ」
「そうしないと、文明が生き残れないからだよ」
坂田は嬉しそうに言う。
「僕が進化論的文明の発達をシミュレートしようとしてるのは知ってるだろう?」
「ああ」
「それがさ、論理的思考を生得的に埋め込んだ個体群は、すぐに死滅してしまうんだよ」
「なぜだい?」
「疫病にしろ、天候の変化にしろ、知的生命体に立ちはだかる困難というのは、その原因を解明するよりも前に、まずとり得る対策をとらねば即集団の存亡に関わるようなものが多いんだ。
 そんな時は、たまたま病気にかかる前にある草を口にしていた者が助かったなら、例え合理的な根拠は薄弱であっても、それが効くと信じて情報を共有する事が集団の生き延びる術だったんだよ。
 勿論、経験の積み重ねと言う篩にかけられる前には、『赤い服を着ていれば助かる』だの『神の水を飲めば助かる』だのと言った純然たる迷信もはびこるんだけどね」
「それは面白いなぁ」
僕にも漸く事態の面白さが分かってきた。
「カントは理性的認識の枠組みがアプリオリに人間に与えられていることを証そうとしたが、真にアプリオリだったのは妄信の方だったと言う事か」
「そして、文明の黎明期に真に役立ったのは、そっちだったと言う事だ」


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