さらばペーパームーン外伝
1995年1月作品

私は今、雨の中の渋谷にいる。

現在の渋谷は、安い回転寿司屋さんが立ち並び、その店舗の多さは日本の中でもトップクラスに位置づけられている。

私は常々回転寿司とはどうあるべきかを説いて聞かせてきた新しい弟子とともに、この若者の街であり回転寿司の街でもある渋谷を徘徊していた。
ここ、渋谷の回転寿司屋の特徴の一番目には、値段の安さが上げられる。 どの皿を食べても一枚100円〜120円という設定をしているところが数多くある。

私の近所に位置していた味と心が最高峰のレベルであった店「ペーパームーン」亡きあと、値段の安さを求め、家から電車で1時間以上かかる渋谷までやって来ることが多くなっていた。

渋谷で試してみた寿司屋は4件以上。そのどこもが各々の特徴を持ち合わせていた。 あるところは値段だけが安く、あるところは1つのネタだけがおいしい。 このように少しだけでも不満が残るような渋谷の安いところで、かれこれ10回は既に食べていた。

今日の昼時、私は弟子とどこの回転寿司屋に入ろうか討議してみた。私は白身のおいしい店を推したが、弟子は値段だけが取柄の店を希望する。 しかし私としては、その値段が取柄だけの店に、もう用は微塵も無い。 それを弟子に言って聞かせ、渋々とした表情をしたが納得してもらった。

そしてすぐにでも私の推した寿司屋に向かうつもりだったが、弟子が本屋に用があると言い、先に本屋に行くことにした。
今考えればこの行動がなかったとしたら、私の回転寿司魂もこれ以上加速することは無かったことだろう。

そして、我々が本屋へ向かう途中、その文句は目に飛び込んできた。

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