さらばペーパームーン
1994年11月作品
「最近、あの店生まれ変わったらしいぜ」と、横に座ってお茶に手を伸ばそうとしている友人が言った。
わたしがちょうど、醤油をハマチにかけている時だった。
現在わたしは回転寿司評論家。近所の回転寿司屋はほとんど網羅したと言っていいほど毎週食べている。いつも土曜日になると友人を呼び出し、なにはなくとも回転寿司屋に直行していたのだ。
そのため、寿司屋さんに顔を覚えられることはもちろんのこと、好みの皿までも覚えられてしまっていた。
しかし、このような状態になるのには、一件の素晴らしい回転寿司屋さんが近所に存在したからなのである。
「よぉし、じゃあ今度その生まれ変わったペーパームーンに行ってみようぜ」
話はペーパームーンが生まれ変わる前にさかのぼる。
当時、みんなでご飯を食べる場所は大抵、ラーメン屋かファミリーレストランであった。
しかし、なぜかその日は回転寿司屋に行こうということになった。
我々4人は、日頃は気にも止めていなかった近くの回転寿司屋さんに行くことにし、さっそく自動ドアをくぐり抜けた。
その当時わたしは、まだ寿司についての知識が薄かった。
なにを食べれば良いのかもつかめていなかった。まだ時間が早かったせいか、回転ベルトには何も置かれていないのだ。
友人は次々と寿司を注文していく。わたしもだまっては居られない。メニューを見て検討をしたのち、ネーミングの響きが良いものに決定した。
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