さらばペーパームーン

そして、最後に重要なポイントがある。

それは店の優しさである。

私は今日までたくさんの回転寿司屋さんを食べ歩いてきた。
違った店に入るたびに感じる店の色合い、店の人たちのざわめき、店のにおい。

寿司を食べているときにも当然これらの雰囲気が存在しているわけだから、寿司の味にも影響してくるというものだ。

実は私は一度だけ回転寿司屋の握り主に叱られて、味が大きく変化したときがある。

回転ベルトには何も乗ってない土曜日の昼下がり、友人らは一斉に寿司の注文をしたのだ。

私は食べるネタに少し困り、熟考の末イカを注文した。ところがそこで握り主が一言

「注文するときは一緒にしてくれなきゃ困るよ」

一瞬、目の前が真っ暗になった。すかさず、ここには旨そうなネタがないんだ、今のはキャンセルでいい、おあいそ願うよ。

と、言いたいところだったが、友人も食べているし、すぐ近くのペーパームーンの開店時間もまだまだだったので、諦めて従うことにした。

本当にこの一言で食べる気がしなくなった。友人もどうやら同意見であったらしい。
そして、この店は少し客を失った。

それに比べて、幻の回転寿司屋ペーパームーンのあいその良さは桁違いだった。
非常に丁寧な言葉を使い、客に対する気遣いも抜群だった。客に頼まれたネタは素早く一生懸命握ってくれるし、同じネタを何度も何度も注文しても、笑顔で非常に軽快に握ってくれるところが本当に嬉しかった。

手に取る寿司がどれもおいしく感じられた。ペーパームーンは本当に本当にいろんな部分で優しい店であった。

お寿司好きな人をみんな連れて行ってあげたかったものだ・・・

そんな素晴らしい回転寿司屋「ペーパームーン」が何故つぶれてしまったのだろう。 後半では、このことについての検証をしようと思う。

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